折尾駅を目指して、中国・九州2泊3日の旅


[その1〜折尾駅解体]


ハードディスクに録り貯めたBSの駅弁番組を見ていた。折尾駅のかしわ飯がテーマだった。 いまでは珍しくなった立ち売りの人が、「この秋で終わりです」という。

慌てて調べてみると「折尾駅周辺連続立体交差事業」とかで、筑豊本線、短絡線も含めた高架駅になるようだ。


春に九州完乗を達成した折りに、若松へ向かう時に降り立ったことがある。煉瓦造りの壁に挟まれた階段を下りると、古そうな木組みに支えられた煤けたホームの屋根が現れる。改札の外へ出たかったが、時間がなかった。九州には、新幹線が開通したときに再訪する。その時には是非立ち寄ろうと思っていた。
事業全体は平成31年度完了予定なのだが、駅の解体は今年10月以降だという。
文字通りTime and tide wait for no man.である。

奈良駅のように移転して保存するという考え方も有るようだが、レンガ壁の日本初の立体交差が消滅するとなれば、駅舎だけ保存しても価値は半減する。 ここは廃線予定線と同様、解体前に再訪するスケジュールを割り込ませるしかない。
九州まで行くとなれば、近くの未乗線も乗っておきたい。まず小野田線とその支線、雀田−長門本山、さらに宇部線、山口線、美祢線、仙崎支線が浮かぶ。
ざっと時刻表を当たってみた。7時の新幹線で伯備線経由で米子へ。鳥取からの特急「おき」を捕まえて新山口へ出れば、その日中に小野田線、雀田−長門本山、宇部線、山口線は乗れる。翌朝は少し早いが、厚狭発6:15の列車が美祢線から仙崎まで直通している。下関には9:48に着くから出て関門海峡を歩いて渡る等しても、折尾駅で充分ゆっくりできる。

一泊二日、宮脇さんがよくやっていてたような慌ただしいスケジュールが出来たが、さてどうしようか。


[その2〜関門国道トンネル全面通行止め]

「九州と本州を結ぶ国道2号の関門国道トンネルが9月1日午前0時から12月18日まで109日間、改修工事のため全面通行止めになる。西日本高速道路によると、通行止め期間としては1958年の開通以来最長という。
迂回(うかい)路は関門橋で、下関インター―門司インターの通行料が普通車では600円が関門トンネルと同額の150円になる。歩いて渡れる人道トンネルも通行止めとなる。」(asahi.com)

折尾駅訪問の際に、歩いて関門海峡を渡る予定だったのに。 突然の発表に驚いたが、鉄道関係では引っかかってこないニュースだった。


[その3〜切符が発行できない]

9月に旅行の予定はなかったが、急遽、日本初の立体交差駅の最後を見届ける。新幹線で往復するだけではもったいない。朝と夕方しか運転されない山口県内の2の盲腸区間、長門市−仙崎と雀田−長門本山もこの際乗っておきたい。更に筑豊本線に乗るなら、平恒の巻き揚げ機台座や志免炭鉱の竪坑櫓の炭鉱遺産も見てみたいと、計画は膨張して2泊3日のスケジュールになった。

左のような大阪−福岡間の片道切符を、近所の駅へ買いに行った。 幹線である山陽本線、山陰本線、鹿児島本線は省いてある。

ところが何度やっても切符が発行できない。 埒があかないので、本社に問い合わせて貰う事にして、昼食に行った。

昼食後戻ってみると、経由地オーバーで発行できないという。
このままだと、手計算で料金を出して上で本社に発行許可を求めねばならない。発行は明日以降になるという。ただ、小野田線は山陽本線と選択乗車区間になっているから省いても乗車できるとのこと。
小野田線は朝夕しか運転されない雀田−長門本山の区間を乗るのに必要だから、途中下車もOKということを確認して発行して貰った。

「わずか」15路線をオーバーすると、なんと片道最長切符と同じ種類の切符になってしまう。 後になって、記念に作って貰っても良かったかなと思った。


計画


1日目は、赤穂線経由で岡山に出て、津山線と因美線を通って鳥取まで行く。
因美線には大正時代の木造駅舎が沢山あるが、2〜3時間に1本しか運転していないから途中下車する訳にはいかない。鳥取は、宮脇さんが「終着駅は始発駅」の中の一編「山陰ストリップ特急」で甲府、山口と並んで本物の温泉がある県庁所在地として紹介している。ちょっと贅沢して温泉旅館に泊まることにした。

「山陰ストリップ特急」には有名な次のような件がある。
鳥取のバーでオカマから辛くも逃れた後、鄙びた?ストリップ小屋を訪れる。
『おばさんのすする鼻水の音を頂上に聞きながら、閉じこめられたような拷問に近い時間をすごした。あの種の曲はせいぜい2,3分であろうが、長い長い時間であった。彼女の古びた山陰本線を眺めながら私は、はやくあしたの朝になればいいなと思った。あすは因美線に乗る予定であった』

文庫本の解説では、エッセイイストでワイナリー経営者の玉村豊男氏が、
「「彼女の古びた山陰本線」なんというウマイ言い回しだろう。宮脇マニア氏以外に、誰がこのコピーを考えつくだろうか」と褒めあげた上に「で、翌日は因美線に乗るだと?」と悪のりする。

『ようやく曲が終わって、私は解放され、「どうもどうも」と言って席を立ちかけると、彼女は、「お客さん、もう一曲あるんね」と言った。もういい、とも言えず座りなおし、別の曲でおなじものを見ながら、また長い時をすごした。』

このやや自虐的なユーモアが宮脇ファンには堪らない。


2日目は、鳥取から山陰本線を西へ向かい、益田から山口線に入って新山口までずっとこの特急に乗りっぱなしになる。
鳥取−新山口間378.1キロを5時間16分かかって走る。
同じ時間、新幹線に乗れば1100キロ先の盛岡まで行ってしまう。特急料金11190円也
スーパーおきの正規料金は3030円だけど、新山口から宇部まで新幹線に一駅乗る(実際は乗らない)事にして乗り継ぎ割り引きにしているから1510+840で2350円。

特急料金だけで比べると、3倍の距離を約5倍の料金を取るから、距離・時間当たり単価でいうと新幹線は実に1.6倍も割高になっている。 更に、乗り物に乗る事自体がウレシイという遊園地的発想に立てば、時間当たり料金が1/5の在来線特急はもう・・・・・。


さて珍説はおいといて、最長距離を走る特急は大阪−札幌の「トワイライトエクスプレス」だが、夜行ではない昼間の特急だと、新潟−青森458.8キロを走る「いなほ」になる。かっては、大阪−青森を「白鳥」が走っていた事を思うと随分と短くなった。
「いなほ」は電車特急だけれど、「おき」はディーゼル特急だ。電化された幹線なら長い区間があるが、非電化ではどうだろう。(それゆえに山陰本線は「偉大なるローカル線」と呼ばれているのだけれど。)ひょっとしてディーゼル特急では最長距離特急か?

北海道には幹線の室蘭本線や函館本線でも、間に非電化の区間があるから、殆どディーゼル特急が走っている。
札幌−函館 「スーパー北斗」は318.7キロ
札幌−釧路 「スーパーおおぞら」は348.5
札幌−網走 「オホーツク」は374.5
札幌−稚内 「スーパー宗谷」「サロベツ」は396.2キロ

んー、サロベツ・宗谷には負けるか。



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